こちらは、「1.食べられる森づくり-ステップ・バイ・ステップガイド~Creating a Food Forest – Step by Step Guide~」からの連続記事です。前回は、土地の”観察”に重点が置かれていましたが、今回はデザインの工程に進んでいきます。
パーマカルチャーでは、”観察”のプロセスが非常に重要視され、土地をデザインする際にはその土地を1年は観察するべきだ、と伝えられることもあります。その詳細な観察を終えて初めて取り掛かるデザインのプロセスとはどのようなものなのか?ぜひ読み進めてみてください。
日本には、こうした豊富な経験や知識がここまで詳細にまとめられているコンテンツがまだ少なく、貴重なガイドになってくれると思います。パーマカルチャーを実践する方々へ、少しでもヒントになればうれしいです。
フードフォレスト・デザイン – レイアウトの作成と植物の選択
大まかなレイアウトを決めよう ー果樹園、森林地帯、サバンナ(草原)など
フードフォレストの外観を決定する基本的なレイアウトは4つあります。Dave JackeとEric Toensmeierは、著書『Edible Forest Gardens』の中で、さらに多くの選択肢を提案していますが、ここでは基本的なものに絞って説明します。
どのレイアウトが最適かは、あなたのゴールとその敷地の特性(気候、地形、生物群系(Biome)など)によります。システムが異なれば、デザインアプローチや管理方法、メンテナンスも異なってきます。
1.のサバンナ(草原)タイプまたはアグロフォレストリー・システムは、キーライン・デザインに基づいており、果実、ナッツ、ハーブの商業生産に適しています。通常、広面積で実施され、機械収穫を効率的に行えるよう等距離の畝を持つレイアウトです。
私たちが2. 果樹園と呼んでいる林間は、より商業生産と家庭用の両方に使えるハイブリッドなシステムです。こちらも等距離の畝を持ちますが、パーマカルチャー果樹園は比較的小規模に実施されることが多いです。
3. 遷移が中~後期の林間は、樹木や低木、ハーブの最も多様で興味深く、複雑で生産的なパターンを提供してくれます。主に家庭向けの食料生産を目的としていますが、このレイアウトは郊外の裏庭でも実施でき、農場規模にスケールアップすることも可能です。
最初にインフラのアウトラインから始めよう
持続可能な規模であることを考慮してデザインを開始し、まず水、通路(Access)、構造物の計画をします。
フードフォレストにとって一番永続的な要素になるため、こうした必需品から始めるのがベストです。
ここには、水タンクや灌漑用水路などの水回りの設備に最適な場所や、アクセスポイント、建物、フェンスなどの配置を考えることも含まれます。
水はパーマカルチャー・システムにとって最優先事項なので、水の計画を一番初めに行います。この段階で開発する水システムが、その先の土地の特徴になり、他のインフラの構成要素がそれに続くことになります。
水システムを設計したらすぐに、道路や小道をどこに配置するかを検討します。これらの配置は、今後何年にもわたってフードフォレスト内でのあなたの動き方を決定することになるので、その候補地についてじっくり、真剣に考えてください。一度設置したら、配置を変えるのは簡単ではありません。
フェンスのパターンは、一般的に通路に準じていて、フードフォレストを異なる”ゾーン”に細分化することができます。そうすることで、必要に応じて別々に管理・メンテナンスをすることができるようになります。そして最後に、もし建てたいのであれば、どこに建物を建てるかを検討します。
メンテナンスを最小限に抑え、生産性を最大化し、有益な動物の生息地を提供するためには、優れたインフラ設計が不可欠です。
育てたい植物のマスターリストを作ろう
あなたが希望する種と、その他の、フードフォレストで特定の目的を果たすために必要な種の、植物のマスターリストを作成します。食料生産、特定の栄養素の収集・保持、有益な昆虫に蜜を提供する植物、雑草制御のためのグランドカバーなど、庭全体に必要な生態系の機能を考えてください。
こうしたカテゴリーに分けてスプレッドシートを作成し、必要な植物を調査してリストアップします。さて、もし希望する植物があなたの土地でどうしてもうまくいかない場合は、生態学的に同等な植物、つまり別の生息地で同様の地域社会の隙間(Niche)を満たす類似の種を何かしら見つけることができます。
そのために、気候の類似した種を利用してみましょう。あなたの敷地の気候区分をもとに、世界の中からほとんど同じ気候の地域を見つけ、その地域の植物を調査することで、今まで育てられるとは知らなかった、さまざまな興味深い種を見つけることができます。
しかし、自分の住んでいる地域にない植物を育てることは、その土地の自然の性質に逆らうことになりかねません。そこで、効果が実証されているものだけに注目することで、物事を楽に進めることができます。ここで、私が言いたいのは…
ステップ1の自身の地域の森林調査結果をもとにすると、その土地で最もよく育つ樹種がわかってきます。これらの在来種や帰化種は、すでに機能し、繁栄している生態系の一部なのです。あとは、あなたの土地でその生態系を模倣し、その樹種のより生産性の高い種を使用するだけです。
マスターリストには、これらの植物を入れることを忘れないでください!
植物のマスターリストからギルドを作ろう
これがまさにフォレストガーデニングの核心です。資源を共有し、相互に支え合う効果的なポリカルチャー(polycultures/ 複作?多文化?)を作りたいのです。しかし、どのように正しい植物の組み合わせを選べばいいのでしょうか?ここでは、Edible Forest Gardensのおすすめをいくつかご紹介します。
まず、あなたが植物について知っていることや推測していること、その種の地位(Niche)や相互作用に基づいて、ギルドを構築できます。そのような形で、実験を通して新しい植物の組み合わせを作り出すこともできます。
もちろん、ランダムに混ぜてみることもできます。多くの人は、ただ興味深い植物のグループを選び、一緒にしてみて、何が起こるか見るだけでしょう。しかし、スパイスとしてたまにそうするのはいいのですが、庭全体がそうなってしまうと、おそらく失敗に終わります。
また、生息地を模倣し、生態系のモデルをデザインのテンプレートとして、そこから直接、種を取り入れてみるのもいいでしょう。モデルとする生息地は、近くの森林かもしれません。
言うまでもなく、これが最も簡単に成功する方法です。新しい何かを発明しているのではなく、自然界ですでに機能しているものをコピーしているだけです。
自生している植物が互いにどのように関連して生育しているかを観察し、それを自分のフードフォレストで真似すればいいのです。
パッチデザインをしよう – 植え付けるエリアと植物の間隔を決める
パッチは、一列に並べたり、輪郭を描いたり、一カ所にまとめて植えたりすることができます。どのようにパッチデザインに取り組むにしても、最も重要なのは植え付け間隔を決めることです。
デザインプロセスに従い、全体のレイアウトを決めるところからデザインを始めたのであれば、パッチ間の距離についてはすでに考えがまとまっているはずです。そうしたら次は、パッチの中でどのように植物を配置するかについて見てみましょう。
この間隔を決める最も簡単な方法は、「クラウン・タッチング・ルール」を使って、個々の木を樹冠の直径分だけ離して配置することです。そのためには、個々の成木の樹冠の大きさを調べて、それを目安にする必要があります。
通常、最も失敗するのは、樹冠が重なり合うような過密な間隔をとることです。スクリーンや生け垣を作る場合は良いのですが、そうでない場合は植物にストレスがかかり、生育が制限されます。
Martin Crawfordは、著書『Creating Forest Gardens』の中で、下層の植物にもっと日光を当てたい場合は、各樹木の周囲に30~50%の距離を置くことを勧めています。また、限られた資源をめぐる植物間の競争を減らすため、土壌条件が制限されているときは、「クラウンタッチ」の距離よりも広く植えるようにしましょう。
今回は具体的なデザイン手法や、考えるべき順番、そして植生の選び方についてをお届けしました。文中出てきた、ゾーンやギルド、パッチといったパーマカルチャー用語についても今後、詳しくお伝えしていきたいと思っています。
次回、最終回ではいよいよ土地の準備と植物を植えるまで、についてのプロセスをご紹介します。
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