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江戸時代から学ぼう②―食

戦後のパン給食をきっかけに食の欧米化が進み、それに伴い日本人の体形や病気も変化しています。大腸がんや乳がん、それに以前はあまり見られなかった心筋梗塞、糖尿病、アレルギーや免疫疾患も著増しています。米の消費量(年間1人あたり)は1962年の118㎏をピークに2022年51㎏と減少を続けています。今日本を長寿大国に導いているご長寿の方たちはお米、和食を食べて育ってこられました。和食の魅力について、温故知新、江戸時代から学びを深めてみましょう。

和食は、世界が認める健康長寿食

ユネスコ無形文化遺産に登録


「和食 日本人の伝統的な食文化」は、2013年ユネスコ無形文化遺産に登録された、世界が認める食文化です。四季折々の自然の恵みを大事にする和食は日本人の感性を育み、また、日本を世界一の長寿国へと導いてきました。

世界でも健康志向の高まりの中で和食が注目され、日本食レストランや食材を扱う店も急増しています。

和食はなぜ健康に良いの?


和食はご飯とみそ汁、野菜や豆、魚介類のおかずが中心で食物繊維が多く、栄養バランスに優れています。また、腸内環境を整え消化吸収を助ける発酵食品(漬物、納豆等)、発酵調味料(味噌、醤油等)も豊富です。

生のままで食べたり、蒸す、煮る、焼くなどの調理法は油を抑えることができ、海の幸、山の幸など旬な素材を活かすため「だし」のうま味を活かしたシンプルな味付けは、調味料の量を抑えることもできます。

江戸時代の食、ここがすごい!

発達した調味料と料理


太平の世が長く続いた江戸時代は、伝統的な和食の完成期です。

砂糖、醤油、酢、みりん、塩、味噌などの調味料やかつお節、昆布などが広く使われるようになり、多彩な味付けを生み出せるようになりました。そして、そば、てんぷら、うなぎ、にぎり寿司、おでんなど、日本を代表する料理が完成しました。

革新的な料理本の流行


世界でも先駆的に、日本初の料理書「料理物語」が1643年に木版出版されました。それまでは公家や武家の秘伝だった料理の奥義が一般公開され、人気を博しました。

江戸時代に刊行した料理本は182点にもなり、会席料理を提供する高級料亭がレシピを公開した「江戸流行料理通」や、一つの食材で100種類のレシピを紹介した「豆腐百珍」「鯛百珍」「大根百珍」などの百珍シリーズが大人気で庶民も知的に食を楽しみました。

料理百科事典のような専門書「古今料理集」なども多数出版され、料理論は極めて完成された域に達していました。

料理店(レストラン)の出現


定食屋や高級料亭など料理店(レストラン)が出現し、地方の宿場町では地域の名物料理が提供されました。江戸の料理店は6,000件もあったといい、料理店を紹介する江戸版グルメガイド「江戸名物酒飯手引草」もありました。料理店の出現は、欧米より1世紀も早かったようです。

江戸時代 庶民の食と健康

庶民の食卓


身分や階級により食事に差がありましたが、庶民の日常は一汁一菜が基本でした。ご飯にみそ汁、漬物で、おかずがついても豆腐やきんぴら、煮物など。魚介類がつくのは裕福な家庭で、それもせいぜい月に3度程でした。ですが、米は1日5合、大量に食べていました。米は貴重だったため普段は雑穀や野菜などを炊きこんで増量した「かて飯」でした。

丸ごと全体を食べる


野菜の皮や茎、葉まで、命の栄養を丸ごと頂く「一物全体食」でした。魚のお頭も焼いて砕き、ごはんに混ぜるなど、徹底して無駄をなくし、どうしても食べられない部分だけ土に戻し循環していました。玄米は、蒔けば芽も出る栄養、必須アミノ酸や、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどが詰まっていますが、白米にすると栄養価は激減してしまいます。

江戸には大量の米が集まるため、江戸庶民は白米を食べることを誇っていましたが、脚気を患う人が多く、将軍も命を落としています。脚気はビタミンB1不足から起こる病気で、玄米の栄養を捨て白米を食べていたことが原因でしたが、当時は原因がわかりませんでした。田舎にもどり雑穀や玄米を食べていれば治ったことから、「江戸わずらい」と言われました。

旬の食材のパワー


保存や輸送手段が限られていたため、近場で採れる旬のものを食べるのは当たり前でした。特に江戸の人々は「初物七十五日(初物を食べると寿命が75日延びる)」と信じ、こぞって初物を口にしたがりました。

旬のもの、スイカやキュウリなど暑い季節に採れるものは、身体の熱をとり紫外線から守る高い抗酸化作用があります。またネギや人参など寒い時期に採れるものは、身体を温める作用があり、旬の食材はおいしく栄養価が高いだけでなく、人々の健康を守る作用も持っています。

食べ物が一番の薬


江戸時代に書かれた貝原益軒の「養生訓」は全国で読まれ、食べて健康を管理する、食養生や医食同源という考え方も浸透していました。今ほど医療技術がなかった江戸時代、出生時や子どもの死亡率は高かったのですが、成人の健康寿命は長く、70歳や80歳を超え長生きしたという人が少なくなかったのです。

日本人の体質に合う和食


農耕民族であった日本人は古来から穀物など植物性の食が基本でした。さらに仏教の影響で肉食が禁止され、近代まで肉を食べることがほとんどありませんでした。長い間穀物を食べてきたことで、日本人の遺伝子には「アミラーゼ遺伝子」が多く存在し、米を食べても太りにくい体質になっていることがわかってきています。また免疫の働きを良くし、優れた健康効果のある腸内細菌「プリボテラ菌」も獲得してきました。狩猟民族だった欧米人に比べインスリン分泌量が少なく、肉や脂肪の消化には向いていません。和食は日本人の体質の強みを伸ばし、健康長寿へ導いてくれる食なのです。

編集後記

わが家も以前は肉や油を多用するメニューが多かったのですが、シンプル和食中心の食に見直して2年くらいで、子どものアトピーや家族のメタボが目に見えて改善し、食の大切さを体感しています。今は和食を基本に、時々洋食のお楽しみを交えるのが、丁度よいバランスになっています。日本の宝、和食を食べて、健康長寿を目指したいですね!

参考

・「調べて学ぶ日本人の衣食住 日本人は何を食べてきたか」 (大日本図書)
・「日本料理の社会史 和食と日本文化」原田信男(小学館)
・「別冊歴史REAL江戸の食と暮らし」(洋泉社)
・「巨大都市江戸が和食をつくった」渡辺善次郎(農文協)

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