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ゾーニング:自然と人との関係性を豊かにするパーマカルチャーデザイン手法

みなさんは部屋や庭のレイアウトを考えるとき、まずどんなことから考え始めるでしょうか?パーマカルチャーデザインでは、配置決めを行う際のひとつの指針として、ゾーニングという手法を採用しています。

現代の農業では効率性や生産性を求め、それぞれの作物を単一で育てる「モノカルチャー」が採用されることが多いですよね。これは農業だけでなく、分業という考え方とも共通するひとつの「カルチャー」と捉えることができます。

対して、パーマカルチャーでは様々な植物を一緒に植え、その植物とそこに集まる生き物がいかしあい、循環するような関係性をデザインします。一見、複雑で非効率的にも見えますが、自然の相乗効果で生産性を高めたり、手入れのためのエネルギーを減らし効率化を実現しています。

今回はそんな豊かな多様性を生みだすパーマカルチャーデザインに欠かせない、ゾーニングという手法についてお伝えします。

ゾーニングとは

パーマカルチャーにおけるゾーニング

ゾーニングは、パーマカルチャーの創始者の一人、ビル・モリソンがまとめた10のデザイン原則のひとつ、「効率的なエネルギー活用法をプランする」(”Plan for efficient energy use.”)ことを実践に移すための重要なデザイン手法のひとつと考えられます。

パーマカルチャーデザインでは、風の向き、日当たりなどその土地の自然環境によく注意を払うことも重要ですが、そこに住む人の活動も考慮にいれることが必要です。パーマカルチャーは永続的な自然環境を作ることのみがゴールなのではなく、そこには人も永続的に生きていける環境があることが大切だからです。ゾーニングはまさに、その人の活動をデザインに組み込む際に重要な観点ということができます。

ゾーニングのプロセス

ゾーニングでは、まず下記2つのことを観察します。

  1. どれくらいの頻度でそれを使用する必要があるのか?
  2. どれくらいの頻度でそれを手入れする必要があるのか?

そのうえで、使用/手入れする頻度の高いものを近くに、低いものは遠い場所におくという原則をもとに、下記のゾーンを参考にして配置を決定していきます。この原則は、私たちは近ければ近いほど、遠い場所にある要素よりも注意を払いやすいという考えを基にしています。そして、これによって移動に費やす時間やエネルギーを最小限に抑える狙いがあります。

ゾーン(区分)の種類

ゾーニングは一般的に0~5の6つに区分されます。

ゾーン 0 家・活動の中心となる拠点。最も多くの時間を過ごすので、メンテナンスや使用頻度が高い場所。
ゾーン 1 毎日、手入れが必要な屋外のエリア。キッチンガーデンやコンポスト、駐車場や温室、作業場など。
ゾーン 2 定期的な手入れが必要なエリア。鶏やうさぎなど毎日のケアが必要な動物や、果樹園、ミミズコンポストなど。
ゾーン 3 時折手入れが必要のあるエリア。牛や羊など大型の動物、季節の作物、大規模な貯水池など。
ゾーン 4 最小限の手入れですむエリア。林、森林牧草地、自生する作物 (ナッツ、在来の果物、キノコなど)、 燃料用の木材など。
ゾーン 5 野生ゾーン。世話は全くしない。近隣の野生生物との境界線であり、自然が支配するエリア。自然災害リスクの軽減や自然からの学びの場としての役割をもつ。

なかには、ゾーン00(インナーガーデン、自分の内側の精神的なゾーン)やゾーン6(領域外の生態系や社会的なゾーン)も含める考え方もあるそうです。

誤解されがちな3つの注意点

ゾーニングを行う際には以下の点を理解したうえでデザインを始めましょう。

  1. ゾーンは必ずしもフェンスや塀などによって区切る必要はありません。
  2. ゾーンの境界線はあいまいで、互いに行き来があったり、混ざり合うものです。
  3. ゾーニングについての説明ではよく、ゾーンが放射線状に広がるイメージ図が使われていますが実際には、土地の形やアクセスなどの条件によって変化させても問題ありません。

ゾーニングはあくまで、各ゾーンに何を配置できるかについてのガイドラインと考えてみるとよいのではないでしょうか。

ハーブガーデンの例

例えば、ハーブガーデンを始めたものの、そこにいくまでが少し大変だったり、植えた植物の手入れが思ったよりも頻繁に必要で、結局虫に食べられてしまったり、枯れてしまった。そんな体験をおもちのかたもいるのではないでしょうか?

料理によく使うハーブなどは、理想的には料理中、それが必要になったときにすぐに手に入る距離に置く必要があります。それが、遠くて服を着替えていかなければいけないような場所にあれば、そこに行く頻度が減り、その菜園を維持するのも難しくなってしまいますよね。

ここにゾーニングの考え方をもとにパーマカルチャーデザインを適応すると、例えば、ハーブティーや料理に使うハーブ(ミントやバジル)や、サラダに使えるもの(ルッコラやパセリ)は、ゾーン0にあるキッチンの窓辺に鉢植えで植えれば、すぐ手に入れることができます。ある程度スペースが必要な低木のハーブ(ローズマリーやラベンダー)は、ゾーン2や3に植えて、たまに一定量を収穫して乾燥して保存するほうがいいかもしれません。また、ジンジャーやローリエなどは、本来森の中で育つ植物なのでゾーン4に植え、ゾーン5には、世話のまったくいらない自生するハーブを植えるというデザインをすることができます。

編集を終えて

今回はゾーニングについてをお伝えしました。いかがだったでしょうか。ゾーニングの優れた点は、その柔軟性です。基本的なデザインの原則は、引き出しの中身から家のレイアウト、コミュニティガーデンまで、日常生活のどんな小さなスペースにも応用することができます。

このゾーニングの考え方を知り、私はアイロン台の場所を1階(ゾーン0)から2階(ゾーン2)に変更しました。それまでは2階で洗濯物を干したあと、1階でアイロンがけをして、再度2階の寝室にもっていっていることに気づいたからです。逆に、2階にあった本棚を1階に移動し、料理本やパーマカルチャーの本を一日に何度も見られるようにレイアウトしました。おかげで本に触れる時間が以前より増えました。

「よく使うものを近くに置く」というシンプルなことですが、自分の行動範囲と、使用頻度を俯瞰して考えてみると見直せることも多くあるのだなと思いました。みなさんもぜひご自身の暮らしをデザインをする際の参考にされてみてはいかがでしょうか。

<関連記事>

 

参考資料

Angelo Eliades, “Permaculture Design Principle 4 – Zones and Sectors, Efficient Energy Planning”, January 4, 2012, Deep Green Permaculture

Permaculture Design Principle 4 – Zones and Sectors, Efficient Energy Planning

April, ”Getting Into The Permaculture Zone”, June 3, 2016, PERMACULTURE VISIONS

https://permaculturevisions.com/getting-permaculture-zone/

 

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Noa

Noa

SOWERS libraryチーフライター

「本当に豊かな暮らし」を求めて、20代で世界中のエコビレッジやサステナブルなコミュニティに滞在。世界の生きたパーマカルチャーな暮らしに触れてきた。ライフワークはコーチング。現在、パーマカルチャーセンタージャパンにてデザインコースを履修中。 SOWERS創業メンバーであり、SOWERSlibraryのチーフライター。

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