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1.食べられる森づくり-ステップ・バイ・ステップガイド ~Creating a Food Forest – Step by Step Guide~

SOWERSでは、パーマカルチャーをもっと多くの方に知ってもらい、実践してもらうことを目指しています。今回の記事は、実際に土地をパーマカルチャーデザインするまでのプロセスについて詳細に語られた上級者向けの内容をお届けします。

本記事の執筆者、ウィリアム・ホーバスさんは、地質学者からパーマカルチャー農家に転向した経歴を持ち、”Permaculture Apprentice”というサイトでパーマカルチャー農園をイチからデザイン・運営するため、たくさんのナレッジを共有してくれています。今回、快く翻訳にご快諾いただいたことに心からの感謝を込めて・・・

とても本格的で、ボリュームの多い記事のため、3回に分けてご紹介します。

初めてパーマカルチャーに触れる方には難しい内容かもしれませんので、実際に”食べられる森(フードフォレスト)”を作ろうと思った際に、ぜひのぞきに来てください。


私が祖父母の農場に行ったときの最初の頃の記憶は、乾いた石垣の上で石を投げたりしてただただふざけて遊んでいた、というものでした。
その時、ふと見ると、ほとんど土がない石の間の、何も生えていない壁の側面に小さな苗が突き出ているのに気づきました。
私は、子供心に好奇心を抱き、重い石をどかして、そのまま育ててみることにしました。それが20年前のことです。

その苗木が、今、下の画像にあるこのたくましい若木、セイヨウトネリコ(European Ash tree)です。彼は干ばつ、大雪、豪雨、氷点下の気温の中でも、誰の世話になることもなく、たった一人で生き抜いてきました。

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今日、私は彼の影の下に座り、食べられる森(以下:フードフォレスト)の計画を立てています。私は、木が人間の介入なしにどのように繁栄するのか、知りたいと思っています。
私が5年前に果樹園に植えたサクランボの木は無残にも枯れてしまったのに、なぜ近くの森に生えている野生のリンゴやプラム、サクランボはこんなに元気なのだろう?
このことを理解するために、私はこのセイヨウトネリコの木の種が生まれた場所に戻り、私の師である森そのものを再訪する必要がありました。

森は私たちの師

私の家のすぐそば、50メートルほど離れたところに森の入り口があります。落ち葉や鳥やほかの生き物、自然の音に癒されるので、私はよくそこを訪れています。そして何より、観察し、学ぶためにそこに行っています。

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これはまさに、あなたのフードフォレストにもそうあってほしい姿です。
果実、木の実、ベリー類、ハーブ類などの豊かな恵みを、少ないメンテナンスで実現するために、さまざまな供給源からもたらされる肥沃な土壌、菌類の大きな助け、野生動物による主な害虫コントロール、スポンジのように水を保持してくれる土壌、多様性の高い植物が存在する森のようなシステムを作りたいのです。

有用な植物で構成された生態系を注意深くデザイン・維持して、森に見られる条件を見習いましょう。
しかし、よく問題になるのは、何もない原っぱから始めることになり、全体のプランに少々圧倒されてしまうことです。『エディブル・フォレスト・ガーデン』のような本を読んでも、簡単には進まず、かえって難しくなってしまうことさえあります。

そこで私は自分のフードフォレストを作る際、計画をなるべく小さく、管理しやすいステップに分けました。できるだけ失敗はしたくないし、正直なところ、失敗している暇もないのです。

今日は、私のプロセスを紹介します。また、森からヒントを得て、むき出しだった土地から十分に機能する生態系を作るのに役立つ追加資料も共有します。
(※注:こちらの追加資料は、本ブログからダウンロードすることは出来ません。気になる方は、出典記事をご覧ください。)

さあ、一緒に飛び込もう!(Let’s dive in!)

フードフォレストに何を求めるか?

まず、プロジェクトの最終的な目標を明確にしましょう。
なぜこれが重要かって?
明確な目標があれば、すべてがより分かりやすくなり、どこに力を注ぐのがベストか、そして何より、さしあたり、何を優先し、何を後回しにするべきなのかが分かるようになるからです。
なぜ、このようなことがしたいのか?に向き合ってください。
1. より自立するため、 2. 収入を得るため、 3. 健康的な食べ物を作るため、 4. 他の人を教育するため、 5. 家族みんなで楽しめるプロジェクトにするため。

このように、あなたの大切な時間やお金のためにも、それぞれに異なる配慮が必要になります。
たとえば、フードフォレストから収入を得ることを目的とするならば、地元でよく売れる木の作物をリサーチし、最も効率的な栽培方法を考えることに重点を置くほうがよいでしょう。
一方、自立することのみに重点を置くなら、できるだけ多くの果物、木の実、ハーブを使った多様性のあるフードフォレストを作り、自分が必要なものを満たす方法を考え、スーパーに依存するのをやめたいと考えるはずです。
最初から考えすぎず、何をしたいのかをはっきりさせておいてください。

探索し、静かに座って観察・分析しよう

近場の森を探検して、あなたのエリアで何が一番よく育つのか、見当をつける

まずは身近な森を気軽に散策することから始めましょう。フードフォレストをデザインする際には、その地域の生態系から学び、それを模倣します。だからこそ、どんな植物が自分たちの地域で一番よく育つかを発見するための、そうした観察が重要です。
周りを見渡して、繁茂している植物を見極めましょう。マーク・シェパードが言うように、多年草を確認し、それらが互いにどのように関連して成長しているかを観察し、その種類をメモしておくのです。後日、そのリストを使って、フードフォレストで栽培できる観察した野生の植物の、商業生産性の高い変種を見つけることができるのです。
このステップは非常に重要です。手間のかからない、食べられるランドスケープを作りたいなら、その土地によく適応した種、つまり、その土地でボランティアのように自発的に育ってくれる種を育てる必要があるからです。
自然を味方につけて、自生している植物の自然な性質を利用できれば、大変な作業はかなり軽減されるはずです。これは、自然に逆らうのではなく、自然と一緒に働くという、パーマカルチャーの基本原則のひとつです。

例えば、私が住んでいる森を歩いていると、エルダーベリー、ヘーゼル、サンザシ、リンデン、サクランボ、リンゴ、ジュニパーなど、数え切れないほどの植物を目にします。そうしたら、フードフォレストで私は何を育てると思いますか?

また、それらの帰化種(naturalized species)から種を採取し、植物の台木として使用することもあります。しかし、それ自体から学ぶことがあるので、種から木を育てる方法については、こちらの記事を読んでからにしてください。

近場の森を探検して、あなたのエリアで何が一番よく育つのか、見当をつける

次に、フードフォレストの建設予定地に、5分でも50分でもいいので、ただ静かに座ってみてください。コーヒーや紅茶を淹れて、自分の周りで起こっていることに意識を向けてみてください。(just be mindful)野生の世界に没入し、学んでください。風を感じ、周りの自然界の音に耳を傾けます。静かに座っているだけで、多くのことを学ぶことができます。

私のベスト・アイデアのひとつで、多くの時間を節約してくれたのは、ただ座って自分のサイトを観察したときでした。何年も前から、私は野生の生垣をコントロールしようとして、毎年切っていたのですが、何度も芽を出し続けました。この無思慮な管理は、常に生け垣の自然な動きに逆らうことになり、大変な苦労がありました。

ある日、静かに生垣を見下ろしていたとき、私はこの問題の簡単な解決方法を思いつきました。私は自分にシンプルな問いかけをしたのです。どうすれば、自然に任せておけるだろうか?生垣をよくよく観察してみると、実は有用な植物もあれば、これから育てようと考えていた植物まであることに気がつきました。

もし、私がそこに植えたい植物を植えておけば、やがて「役に立たない」植物よりも成長し、毎年すべてを無意識に切り捨てる必要はなくなります。私たちは仕事モードに入りすぎていて、本当はもっと簡単な解決策を思いつかないことがあります。観察し、考え、適切な問いかけをする時間を持つことで、お金や時間、不必要な労力を節約することができるのです。

このように、意識的に物事を見る時間を持つことで、物事を整理することができ、その場所自体に関する重要な情報が豊富に見えてきます。

現地調査と基本マップの作成をしよう

さあ、ここからはパーマカルチャー探検家の帽子をかぶって、その土地についてのメモを取る時間です。水源、気候、土壌、傾斜、地形、野生生物など、ランドスケープについて読み取れることはすべてメモしておきましょう。

周りに見えるランドスケープとその結果としての生態系は、気候、地形、土壌、生き物の相互作用によって形成されています。したがって、自分の敷地をよりよく理解するためには、これらの要素、あるいはその一部を一つずつ分析していく必要があります。

このとき、積極的に関与しながら現地を歩き、調査を行い、さまざまな自然のプロセスを見ましょう。現代のテクノロジー(スマートフォンやデスクトップコンピューター)を使えば、気象パターン、地形の形状、土地全体の水の動きなどを把握することができます。

また、実際に土に触れて、土壌の質感、構造、生物活性を調査したいものです。どこかの研究室のテストをいくつか行ったり、基礎的なテストを自分で実験してみるのもよいでしょう。

収集した情報をもとに、初歩的な手書きの地図やGoogle Earthをベースレイヤーとした地図を作成し、プリントアウトしたものにメモを添えて注釈を入れます。分析したランドスケープの構成要素ごとに、複数のテーマ別マップを作成してもよいでしょう。

その地図から、どこにサイトのポテンシャルがあり、何をデザインする必要があるのかが見えてくるはずです。

今回は土地を具体的に観察し、マップに起こすまでの詳細について、ご紹介しました。次回は、観察を基に、デザインと植える植物を決定するプロセスについてです。ご自身の土地にパーマカルチャー・デザインを取り入れたい方はぜひ最後までご覧ください!

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※こちらは、SOWERS Libraryが動き出す前にはさみ個人が発信していたPERMAというブログ記事からの転載となります。

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Noa

Noa

SOWERS libraryチーフライター

「本当に豊かな暮らし」を求めて、20代で世界中のエコビレッジやサステナブルなコミュニティに滞在。世界の生きたパーマカルチャーな暮らしに触れてきた。ライフワークはコーチング。現在、パーマカルチャーセンタージャパンにてデザインコースを履修中。 SOWERS創業メンバーであり、SOWERSlibraryのチーフライター。

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